*Novel's map*

◎・・・・連載
*・・・・成人向け(タイトル横)R18以上はPASS制


ミッドナイトブルー

【高×銀】
*あの頃は確かに護られていてそれを当たり前だと思っていた。
でも気づいたときには当たり前のことなんてなくて、でも確かにあの頃満たされていた“何か”があった。
今思い返してもそれがなにか形のあるものじゃなかったけど、あの日の記憶とそれを満たす色があった。
それを思い出して内に未だ秘める高杉。自分と同じに育ちながら
銀時の見ていた記憶とその色を知りたい、と願って、未だ捜し求めている高杉の苦悩。






道端の蒲公英を摘み、綿毛を飛ばすと蒼く澄んだ空に気持ち良く散っていく。
高杉の瞳にはいっぱいの春が浮かんでいた。
隣の桂がそれを真似て、自分も・・、と一輪摘み口を窄ませて吹くと更に増して風に舞って流れていく。

ふわりふわりと、仰ぐ景色の中に、先生の姿を探して――。

その畦道を、他の生徒と並んで歩く先生の後ろ姿を見つける。
どうか自分に気付いて――、と舞い散る綿が先生の元に届くことを願って・・・、高杉は一生懸命と口を尖らせる。

そんな高杉を横目でみて桂も我先だ、と幼いながらの意地を見せた。
更に春は舞い、覆い被さるよう視界を邪魔され、姿が見えなくなって高杉は怒る。


「真似すんなよ」
「ふん、お前だって」



春は色んなものを運んでくる。
寒い冬に堪えて豊かになった季節。冷たい心が少しずつ溶け出して、一斉に溢れ出すのだ。
季節が変わり訪れる心模様と共に。
そんな、微笑ましい2人をあの先生はいつでも見守るように微笑んでいた。

桂の返しが気に入らなくて、高杉が睨みつけると微かな笑い声が聞こえてようやく自分たちの行動が見られていたのだと、急に恥ずかしくなり不貞腐れた表情で返した。


「なに笑ってんだよ、先生」
「ははは、お前のような馬鹿な生徒のことだ」


幼き頃から減らず口の桂が直ぐに横から茶々を入れる。
先生は更に声をたてて笑い、2人はまた、いつもの喧騒に走る。

その人が微笑むと、周りもなんだか春のように暖かくなってそれが自然と調和されるようで。
そんな小さなことが少し嬉しく思えた。・・・けれども高杉はやっぱり桂の返しは気に喰わない。いい気になるな、と目で示したが、既に先生の元へと駆け出していた桂には届かなかった。



子供の頃、みんな先生が大好きだった。

幾度も巡る季節のように時が流れていくことに不安は感じなかった。寧ろ当たり前だと思っていた。
温かい季節が過ぎてやがて深い眠りについても、いつもあの人に護られていたんだと気付いた時には・・・もう、先生は記憶の人だった。


今は―――。

静かな部屋に静かに眠る銀時がいる。

寺子屋、そして攘夷時代をも共にしたこの男は、戦場であんなにも荒々しく勇ましい程赤が似合う男だったが、眠る時はその息さえひとつも零さないかの如く、静かな男だ。

まるでいつも自分の隣には誰もいないかのようだった。あるいは死人のように動かず、夜中目が覚めると漆黒の闇の中を1人でいるような孤独感に苛まれた。
そっと額と額を合わせてみると、ようやく生きている証拠――というべき、極僅かな吐息とぼんやりとした温もりが伝わってくる。

なにかを失ってしまった、――弱さ。
普段奥にしまい込んでいるものが、宵の刻に疼きだす。古傷が騒ぐかのように――。

「銀時…」


そう声をかければ言葉では答えてくれる。でも本当に欲しいのはそれだけではない。
深く濃藍色の眠りについても、あの雪解けの春のように満たされる色。先生が笑って通るあの光の中にいた記憶の色。

あの頃、あの時代を共に過ごしていた銀時も知っているのだろう。
あの金色を纏った世界で護られていたその色を。
手に入れても届かない思いを抱き、今宵も高杉は夜の闇をさまよい続ける。
銀時が高杉の色を知る、…その時まで。


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