*Novel's map*
◎・・・・連載
*・・・・成人向け(タイトル横)R18以上はPASS制
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・夜想
【高×銀】深き宵の刻。
は、と気付いて辺りを見回せば部屋の中は暗闇と化していた。
・・・どうにも、深く眠っていたらしい。
傍には読みかけのジャンプが頁を開き置かれていた。
普段騒がしいこの部屋に、銀時は独りだった。
ふいに外窓から何かが当たる音が聞え、暫くしてその後続けて数回・・・その、何かが、コツンコツンと小さな響きを聞かせた。いつもなら確認するのだが今日は、違った。そして勝手を思う。(きっと、雨でも降り出したに違いない、のだと。
それよりも、気になることがあった。胸が、騒いでいるのだ。
(・・・どうして。今宵、あんな夢を見たのだろう)
それはとても、鮮明な夢だった。
(――また来ちまったのか、)
久しぶりに見た夢だとはいえ、見せる夢は選べないのか。
その地は、数知れぬ骸が散らばっているのをただ見下ろすことしかできなかった。選択権などなかったのだろうか。夢も死人も・・。
銀時にとっても忘れられない・・・深く沈んだ痕が疼いた。
***
銀時が生きていた時代は、いつも孤独が付き纏った。
降り止むということを知らぬ冷たさと、人の肌の様な生暖かい雨の中に、
ただ独りとして立ち尽くして。
天を仰げばあるはずの陽は、いつもならば煩いほどギラギラと眩しいのに、この頃は何処に居るのか、気分が優れないのかもうずっと拝むことさえ叶わずにいた。
――まるで空も泣いているかのようだった。
だが、皆、その口は堅く、その誰もが口を噤んだ。生ある者は黙り、他は屍になっていく。
死を迎えた者は口を割ることも愚痴を言うこともなく、ただただ血み泥まみれの地に転がっている。
何体もの骸たちが這いずり回り、空が泣く雨だけが自分を濡らしているのではなかった。
ほんの少し前まで対峙していた者の血も浴び、一向に降り続く雨にただひたすらその身を濡らしていた。
涙も血も、汗も地位、名誉も、すべてを洗い流されると思えるほどに。
そうして出来上がる戦場には、踏み潰された沢山の足跡に溝ができ、いろんなものが流れていった。
幾人の猛者たちがどれだけ消えて逝ったのか。けれど決して、どんな雨に打たれても同志たちの涙は流れ落ちていくことはなかった。
***
時の針がカチリと音をたて、それからほどなくしてその先に微かな気配を感じ取った。
(・・・・神楽、か?)
一瞬、そんな思いが過ぎるが確か、新八の家に行くと行っていたはずじゃなかっただろうか?
・・いや、気のせいだろ、こんな夜更けに誰も来るはずは、ねェよ。
そうは思ってはみたものの、・・やっぱり気になって用心しながらも玄関を覗くと、ぼぅ、と浮かび上がるシルエットに思わず銀時はビクりと肩を震わせた。
―――ッ・・・!
ま、まさかッ――、・・・・・。
(出tt・・・・・!!!)
浮かび上がる黒い影に銀時は怯えながらも懸命に、近づいていった。
後から自分でもこの行動にはちょっと意外だと思ったが、そのときは余裕があるはずもない。
だが1度寝室へと急いで戻り、洞爺湖を常備して再び戸口へと向った。
そしてそっと、開けた。そこには――、銀時はその目を見開いた。
――あ、・・・。
思わず小さく出た声に、「なんだその反応は」とでも言いたげな男はとても不服そうだった。
「よォ、」と一声、暗いシルエットの中からぬっと顔を出して久しぶりに聞いた声だった。
くつくつ、と喉の奥にて震わせる男を、銀時は当時を振り返るよりも鮮明により近い記憶にて思い出させてくれる男。
「会いたかった、――だろ?」
「そう顔に書いてある。」なんて憎たらしくも誇らしげに云うその口に、銀時も負けはしない。
「ちげーよ。つーかこんな時間になんなの?泥棒かと思ったわ」
ばさり、と笠から積もった雪を落とし、ひんやりとした冷気が銀時の肌に触れた。
肩まで積もった白い塊が音を立てて落ちる。
「オイオイオイ、そういうのは外でやってこいよ」
そう怒鳴るが本人はまったく聞く耳を持たない。
もしかして、さっき雨だと思っていたのは、・・・、と外へ出れば白月に照らされた銀色の世界へと形を変えていた。
やけに美しく、やけに眩しく見えるのは、周りの空気が澄んでいるからだろうか。
寝静まったネオン街、人気のない通り。
ああ、それで、この男が此処に来た理由が――。
どうして自分にあんな夢を見せたのか。少しだけ合点がいった気がした。
まさかの虫の知らせとでもいうべきなのだろうか。真偽の程は定かではないが、、。
――ったく、どういう風の吹き回しだ?・・・お前の夢を見る、なんてよ
そう云うと高杉は少しだけ首を傾けた気がした。
「見てくれたのか。そりゃぁ、いい。・・で、どんな夢だった?」
そう間髪入れずに聞いてくる奴に、(・・ちったぁ、ありがたく思いやがれ)などと思いながら、
「ふん、じゃあ言ってやろうか?おめェが、おっ死ぬ夢だったぜ」と返す。
それでもまたこの男はくく、と嗤いながら「ほぅ、それじゃあ、おめェさんはどうなんだ、銀時ィ」とわざと聞いてくるその仕草や反応にいちいち苛々を募らせながら
「だーかーら、俺はこの通りピンピンしてるぜ。なーんも、心配するこたぁ、ねーってよ」
「そうかァ、そりゃ、残念。」含みのある笑いで返す高杉を銀時は更に
「ああ、大丈夫。俺は、この通り!」と銀時は流暢に返した。
――だから、おめェも――
そう言い掛けて、言い終わらない内にスッと間に入ってきたその感触に
銀時は容易く抱き締められてふわりと浮いた。
意外にもやわらかく、しなやかに。けれどもしっかりとその身を抱かれた。
――・・・・・っ。
今度は自分でもどうしようもないくらい声にならない聲だった。
目を見開いたままで。・・・この偶然は、決して偶然ではないことをこの時、知ったのだ。
――っ・・・・たか、すぎっ・・・!
心の奥、ずっと耐えていた思いが、疼く。
きっとこれには、もう、逆らえないのだろう。
洗脳であったとしても、いい。記憶の刷り込みだとしても、、、
咄嗟に腕を廻して、抱き締め返そうとした。
・・・・だが、そこにはなにも、、、
なにも、残るものはなかった。
そして、目をあけた。
肩を落とし、零した息は白く、部屋の温度も下がっていることに気付いた。
窓は白く濁った靄がかかっていた。
――ああ、今日もまた、・・・この夢だった。
息が詰まる思いのとき、あいつは決まって現れた。・・・もう何年目になるのだろう。
銀時が孤独に苛まれるとき、またはどうしようもないとき、
こうして高杉は、なんの咎めなく現れる。
この俺を咎めることなく・・・。
今度会ったら、言ってやりたい。
俺はもう独りじゃない、って。
後ろの窓にコツンと当たる音だ。・・・なんだかそんな音がしたような気がした。
もう、一面白くなっている頃だろうか。
けれども、落ち着いたはずの心は、まだ今宵自分に何を見せるというのか。
いつもなら夢の続きは、ないのだ。
何年切望し続けて叶う事がなかったのだから。
諦めは肝心だ。いつまでもくよくよしていることは利口じゃない。
そう、考えて、銀時は外の空気でも吸いに行こうと立ち上がる。
玄関に向う、そしてやっぱり・・・確認せずにはいられなかった。
そこに姿は・・・。
(・・・、だよな。あれは夢だから。)
そう思いながらも、カラリ、乾いた音で開けた光景は、夢と同じだった。
ふと見あげれば、白い月が浮んでいる。
その見上げた目線、――その下を歩く人影をみつけ、その目は再び大きく見開いた。
さくりさくりと音を踏み、白い中、歩いている者。
笠を被った男、だ。
白い月に照らされ、その影と共にこちらへとやってくる。
そのとき銀時は、――。
その心は先へと、駆け出していた。
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