*Novel's map*

◎・・・・連載
*・・・・成人向け(タイトル横)R18以上はPASS制


**

当初より神楽に打たれた腹の痛みは少しはマシになりなりつつあるものの、
土方の抱き締められている体制の方が高杉には結構しんどかった。
嬉しさ半分と嬉しいと正直に思えない身体の具合の悪さにより
先ほどまた小さな唸りを思わず発してしまったのだが、
最初の「ぐふ」よりは気味悪がれないのはよかったが・・・、
かといってその後彼の異変には誰も気付いてはくれないようだった。

いろいろ複雑な思いから高杉の震えが身体に表れていたが、またここで喋るわけにもいかなかった。
喋ったら、ここまで自分を隠そうと努力してくれた土方に迷惑がかかってしまうだろう。
・・・だって、さっきのうめき声はかなり気持ち悪がられてたし・・。そしてなによりも・・・、
この今『被らされているもの』はどうやら痕がつきやすい安物のようだ。

土方が自分を護ろうと必死になってくれているのはわかるが、
土方の顔そして腕が俺の身体を締め付けていることに、多分こいつは気付いていないのだろう。
それは締め付けるほどに痕は残り、まるでかわいそうなステファンになってしまっていた。



(・・・うぐぐ・・・ぐ、・・・ぐるじい)
・・・だが、ここでそう、唸るわけにもいかなかった。
が、そろそろ限界が近づいていた。そして叫・・・ぼうと高杉は・・・・

「もういいだろ!もうほっといてやれよ!!もう、こんなに・・・こんなに、弱々しいじゃないか!弱者を虐めて何が楽しいんだ!!!」

そして、高杉の叫びは、・・・・涙腺が崩壊した後の土方の悲痛な叫び声に・・・・すべて掻き消された。

*


「え・・・。いや、わ、悪かったって!べ、別に泣かなくてもいいじゃねェか。」
「そ、そうですよ土方さん、どうしてそこまでっ」
「大丈夫アルか?お腹でも痛いアルか?」

(お前が殴ったからだろーが!!!)

神楽の脳天気な返しに心の中で罵声を吐く。
こいつ、自分がやったことに自覚をしていない・・だと!!

も、もういい!もう関わるな!もう触れるな!ステファンと俺に――!!
更に強くステファンに土方は抱きつく。
それに伴い、中からは「ふ・・ぐぅ」と小さな嘆きが聞えた。


「おい、神楽こいつやべーよ。も、もう行こうぜ」
「そ、そうですね。ぼ、ぼくら買出しに行かなきゃ」
「えー、もう行くアルかー?」


興味津々の神楽を2人で引っ張りながら逃げるように去っていく万事屋一行の背を見送って、残る厄介な長髪男も一喝しようと振り返る。

「おい、これでわかったろ。もうこいつに関わ」
「おい、お主、新人か?!道に迷ったのではないか?・・・さあ早く研修に戻るのだ!」

(なんでそうなるの――――?!!!!)
桂は何も応えないステファンを強引に引っ張り、連れていこうとするのを土方が必死に止めに入る。

「違う!違うから!・・・・え、オイィィィィィ!!!!」
「なにをするのだ!放せ!無礼者め!こやつを解放しろ!」


土方と桂が口論を始め、2人に片方ずつ腕を引っ張られても高杉はただ無言でされるがままにされていた。
普段ならばキレてもよかったが今はそんな心配をしてやれる程土方にも余裕がなかった。
しかしそれを見越してなのか高杉のいつもの無謀さは表に出ることはなく、
桂に引っ張られては右へ、取られては困ると土方に引っ張られては左へ、体を預けている。

ただステファンの無表情の顔のまま、時には何処を見ているかもその無表情さは変わらなかった。
桂が力を入れるだけ、負けずと土方の力が加わる。
これでは何回やっても同じ事だ。埒が明かない、と桂は持っていた時限式爆発物を土方めがけ投げつけるなり、
その隙を見て捕まれたステファンは逃れる術をなくし、煙幕の中でそのまま桂に連れて行かれてしまった。

「ううっ・・・げほげほ。な、なんなんだあいつは!す、ステファンー・・・じゃなかった高杉ィィィィ!!!」

煙に巻かれ咳き込む土方の視界が開けた頃はもうすでに、
長髪男とステファン高杉の姿は見えなくなっていた。


***



「待たせたな!しっかりと練習していたか?皆、紹介する。新人の・・・ステファン君だ。仲良くしてやってくれ!」

あれだけステファンのことを気持ち悪いとまで陰口を叩いていたという男は、
意外とこういう場面になると我が仲間意識だと思うのか、
既にステファンのことを同志としていることが桂らしいと高杉は思っていた。

ここまでくる道中、既に
「お主もあんな男の元にいないで私と一緒に攘夷活動はしないか?」
と誘われていたものの高杉は全て無言で通した。

『ステファン君!』『ステファンさん!』『ステファン殿!』

桂の一声で同じような白い生き物が高杉の周りにわらわらと集まってくる。
皆、手には白いプラカードを持っていた。
今の外見と同じく白い生き物達に囲まれて、ほんとうに高杉が知る者などはいない。

きっとこれも口うまい桂に攘夷活動として勧誘された者たちなのだろう。
・・・ヅラめ。姿を変えようとも忌々しくこんなところに潜伏してやがるとはな。


そんな中、頭の片隅にて声が聞こえて来る。
『ちゃんと変装してなきゃだめだろ』と土方の声だった。
変装するならやっぱり俺みてぇなのになりきらねぇとダメだな。
しかしステファンってのは、・・・いったいなんだ?


「さあ、新人ステファン君!君の意気込みを見せてくれないか?」
いきなりの桂の無茶振りに高杉は焦った。
意気込み、なんていわれても、さっきの呻き声で周囲は怖がっていたし
自分も痛い思いしたし、果たしてステファンとは喋っていい生き物なのか?という疑問にぶち当たった。

(・・・・っていうか、ステファンってなんなんだ???)

やっぱりすぐに一番知りたい心理に辿り着いてしまう。
これまで身を隠すことに一応これでも専念してきたつもりだ。
だとしてもやっぱり高杉には『ステファン』だなんて初めて聞く名前だった。
こんなに話しの中心にもなっているという“ステファン”だが、
実のところ高杉の知識とは、あのエリザベスとかいういつもヅラのオプションとしてスタンドのようにいる隣の家の白い壁みたいな奴。・・・という見解しかない。


・・・しかし、本当に、ステファンとは一体何者なのか??
土方は何を思って自分にこんなものを被せたのだろう。・・・
『宇宙怪獣ステファン』・・名前の響きからして化け物じゃねェか。
・・・天人か?銀時ンとこのチャイナ娘にエリザベスと呼ばれるあの化け物と勘違いされていたくらいだからな。

ヅラにも何度も見返されていたし・・・(おかげでもろに聞こえた陰口までも・・・)
きっと外見も同じようなモノってことか?
今までの行いを思い出すと土方が必死の形相で周知の目を誤魔化してくれていたことにすまなさを感じた。


(土方ァ、すまねェ・・・・。)


高杉が黙りこみ自分の深層の迷宮に陥っていた頃、隣にいた外見は同じ生き物が横からすっとプラカードを取り出した。
いったいどこからそんなでけぇもん取り出してきやがった・・・!と驚く間もないほどに奴の動きは素早かった。
高杉が目を見開くとその白い生き物が高杉の手にそっとプラカードを持たせてくれた。

『桂さん!ステファン君はまだ要領がわからないようです!自分が手本を見せます!』

そして高杉の、隣の白い生き物は自分のプラカードを掲げた。「おおそうか、そうだったな。すまない。では、手本を見せてやってくれ」桂は素直に謝ると、隣の白い生き物に向き直る。

高杉は手に持たされたプラカードの字をそっと読んでみた。

(・・・・・!!)

『君の仲間が迎えにきている』

その手は“後ろに早く行け”と合図を送っていた。どうやらその1匹が高杉に助け舟を出してくれたようだ。桂は皆と熱心に指導をしている。今なら自分が抜けても気付かなそうだ。


少し上体を動かし周りを見渡せば、
左の方角に路地に隠れこちらの様子を心配そうに窺う土方の姿を捉えた。
それから高杉はぴょこぴょこと体を揺さぶりながら土方の元に駆け寄った。
その後振り返っても桂はこちらに気付きもせずに熱血指導を続けていた。

・・・・その後。

高杉はあの日の出来事を振り返る。
あの時、隣の者に助けて貰えなかったらどうなっていたことだろう。

「それにしても・・・、そいつは誰だったんだ?」
「・・・・・さァな。」
「・・・・にしても危なかった。・・・すまん。俺としたことが」
「くくっもういいじゃねェか。過ぎたことだ。俺はお前に会えたんだからそれでいい。」
「・・・・・そ、そうだな」

こんな事件があっても高杉は以前と変わらず、平然として嗤ってあの日のことを話した。
そんな変わらずの高杉を土方はいつもと同じペースに乗ってしまうが、
いつもよりは優しく迎え入れていた。




――それから幾日が過ぎた頃。


高杉が煙管を燻らせていると背後から声がかかる。
「難しい顔をしてどうしたでござるか?」
振り返れば、あのときに隣にいたあの、白い1匹だった。

「万斉、なにしてやがる」
「この者の名、『ステファン』というらしい。最近流行っているでござる。晋助もぜひ着てみるといい」
「そうか、」
高杉は密かに・・くく、と嗤って答える。
「よく似合ってるぞ、おまえ。・・・・まあ、たまには着るのも悪くねぇな」

そう言った後の高杉はどこか満足気に笑っていた。
万斉が立ち去る間際、もう1度振り向いて告げた。

「ああ、そういえば忘れていたでござる。この被り物、どこかの侍の持ち物らしい」
「・・・名は?」
「・・・いや、拙者としたことが忘れてしまったでござるよ。最近物忘れが多いでござるな」
「ふん、まだおまえそんな齢じゃねェだろが」
けれどその口は笑っていた。
「ああ、そうだったかな・・。いや、そうでもないな。」
「そんなことも忘れちまったってのか・・?フン、まあいい」

ありがたく受け取っておく、といい高杉は万斉からそれを手に取ると
万斉は「確かに渡したでござるよ」といってその背を向けた。

「・・・ああ、悪いが1つ頼まれてくれねェか」
そのままでいい、と高杉は懐から1枚の紙を渡す。
それをお前さんが名を忘れた侍に届けてくれ。中は、聞くな。とだけいい
「そんなことすらもお前は忘れてしまうだろうから丁度いい」と付け加えた。

「いやはて、誰でござったかな・・・。」と惚ける万斉に
高杉は「・・しょうがねェな」と笑って応える。
「・・・承知した」と微かに笑い去る万斉の背を高杉は静かに見送ったのだった。



<<#1 完>>

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